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第1109話
「ん?
どうした」
『あのっ、指輪、本当にありがとうございます。
すごく綺麗で、嬉しくてずっと見てます』
「気に入って貰えて嬉しいよ」
『もしかして、この指輪って寝室の本棚に置いてましたか?』
「あぁ。
よく分かったな」
驚いた。
何故、本棚に置いていたのを知っているのだろう。
しかも寝室と言い当てた。
部屋に来ていた時だって寝室には行かなかった筈だ。
いや、特別隠していた訳でもないが。
それでも、見られていないと思う。
そう答えた瞬間、三条の表情が更にふにゃふにゃになり頬を嬉しそうに緩めた。
『へへっ』
「なんだよ」
『へへ……へへっ』
目が離せない、そんな顔で嬉しそうにする三条。
頬の筋肉をゆるっゆるにして、へへっと笑いだした。
一体なんだと言うのだろう。
『愛されている事を堪能してます。
俺は、すごく愛されてますね』
「今までは伝わってなかったのか?」
『今までも伝わってきてましたけど、へへっ』
よく分からないが、この気持ちを少しでも伝えられたのなら良かった。
ただ、伝わっているのは何十分の一だ。
1度に伝えたらその細い身体が折れてしまう。
だから、何度も何度も何百回も数千回も伝える。
うんざりするくらい沢山。
覚悟していてくれ。
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