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第1110話
首から外し、小さなそれを指に嵌めた。
まるでここが定位置だと言わんばかりに薬指に収まるのが心地よさそうだ。
それを見詰める三条も長岡も。
「そういえば、サイズもぴったりですけどよく分かりましたね。
俺だって自分のサイズ知らないのに」
『ん?
んなの、何年触ってると思ってんだよ。
余裕だ』
「だって丁度骨が通るギリギリですよ。
こういうのって、サイズが違うと雰囲気壊れちゃうじゃないですか。
ドラマとか本みたいでした」
『指もほせぇからな。
落ちねぇようにするなら遥登の場合、肉でとめるより骨の方が確実だろ。
サイズぴったしで良かった』
骨の太さを知られているのはなんだか恥ずかしいが、この体型なので丸見えだと言われれば頷くしかない。
いくら裸を見られていても、自分で見た事のない箇所だって見られている。
もっと言えば舐められ触れられてる。
そっちの方が多分絶対に恥ずかしい。
『誕生日に渡せなくて悪かったな』
「なんで謝るんですか。
俺は、こんなに嬉しいんですよ」
誕生日なんて気にしなくて良い。
元気でいてくれれば、俺はそれ以上はない。
それに、通話アプリで顔を見ながら誕生日を過ごした。
とても嬉しかったのは紛れもない事実だ。
『20歳の誕生日だろ』
「そんな事、考えててくれたんですか…?」
『そんな事、じゃねぇよ。
もう親御さんの許可なく、なんでも出来んだろ。
だから、そのはじめての自己責任は俺が奪ってやろうと思ってた』
「沢山奪ってるのに」
なんだかおかしくてクスクス笑う。
はじめてのセックスもキスも、ラブホテルも、友人以外との外泊も、この気持ちも。
沢山のはじめてを長岡と経験した。
それなのに、貪欲になってくれるのが嬉しくてたまらない。
『いつか、本物買ってやるから楽しみに待ってろ』
「え……」
『だって、それ、右手だろ』
「…っ!」
今はまだ約束。
いつか、その日がきたら俺もちゃんと渡したい。
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