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第1112話

同輩の分と共に自分のマグを洗い終え、簡単に備え付けられた湯沸かし器のガス栓をしっかりと締めた。 鞄に荷物を詰め込み、忘れ物の確認をする。 各ノートと筆記用具。 ファイルも一応鞄に詰め込む。 短いとは言え休みには変わらない。 新しく勉強したい事もあるので忘れ物があると手間だ。 あとは… それから写真立てを見た。 元気でいる事を願うばかりの生徒達。 恋人から話は聴いているが、それでも安心する訳ではない。 差別されるのを恐れ言っていないだけも有り得る。 無症状だって。 だから、どうか元気でいてくれ。 どうか。 過ぎた縁をこんなに大切にするなんて、らしくないと言われても大切なクラスの生徒達だ。 そう思うのは自分ではどうする事も出来ない。 むず痒いこの気持ちは、A組が教えてくれたもの。 大切にしなければ勿体ない。 動きを止めた長岡の背中に声がかかる。 「俺ももう帰るので気にしないでください。 戸締まりもしますよ」 ボーッとしていたのを、気にしていると思われたのか柏崎はそう言ってくれる。 だが、たまにはそうさせて貰おう。 「ありがとうございます。 じゃあ、お言葉に甘えさせて貰います。 柏崎先生、よいお年をお迎えください」 「はい。 長岡先生も、よいお年を」

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