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第1113話

部屋の電気を点け手洗いうがいをし、その手で通話を繋げる。 あっちとこっちが一瞬で同じになるこの瞬間が好きだ。 そして、やっぱりこの顔。 「ただいま」 『おかえりなさい。 今日は遅かったですね。 やっぱり年末は忙しいですか?』 「まぁ、今年は色々あるしこんなもんだろ。 それに仕事を来年に持ち越したくねぇからな。 出来る事はやっとかねぇと気持ち悪りぃ。 これは俺の性格だから勝手に忙しくしてるだけだ」 クリスマス以降会う事の出来ていない恋人はなんだか着脹れいる。 いや、それでも普通くらいだ。 せめてこれ位肉が付いて欲しいのだが体質だけはどうしようもない。 「寒いのか?」 『こっち吹雪いてて…』 車で30、40分の距離だが、雲の動きで雪の状況はガラリと変わる。 以前の学校は聳える山のお陰で比較的雪が降らない一画だった。 そこを過ぎれば田んぼばかりの吹きっ晒し。 ビュービューと空気の音が聞こえたものだ。 更に奥にある三条が暮らす町も数年に1度は電車が埋まる。 在学中もあったので特別な事ではないが、やはり心配もある。 静かに降り積もる雪は恐ろしい。 すべてを真っ白で埋めてしまう。 それに、必要な肉すらない身体では骨まで冷えてしまいそうだ。 これに関しては本当に心配している。 『正宗さんも寒そうですね』 「今日はこっちも1段と冷える。 部屋あったまるまでコート脱ぎたくねぇ」 『だから晩飯はおでんですか?』 「ははっ、そう。 見えてるな。 スーパーで買ってきた。 チンして食う」 レトルトのおでんにうどんを入れて食べようと思ったのだが、もう少しだけ恋人の顔を見ていたい。 コートも脱がずに部屋があたたまるまで恋人の顔を満喫だ。

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