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第1117話
大きな口でパンダをかじると、にこーっと嬉しそうな顔をする。
この顔が見たくて沢山食べさせてしまうところもある程、良い顔だ。
祖父母が食べな食べなと進めてくるのは、こういう事なんだろうか。
「おいち、ね」
「美味しいな」
「みっちゃ、あー」
「お母さん、おっきーいお口で食べちゃうから綾登の分がなくなっちゃうよ」
「ちょっとね」
綾登は、母の膝の上を陣取りご機嫌。
膝に座れば、いつもの父親との席取りの必要がなく膝は三男の特等席。
父親でさえ、その席には座れない。
その席のあたたかさを知っているのは、母親が大好きな父親以外というのがまた面白い。
だが、母親の膝の上だけは子供の特権だ。
パンダのクリームパンを食べ、コアラのチョコレートクリームへと伸びる手。
「やべ。
二口で食っちゃう」
「美味いもんな」
「もぐもぐしないと、めっよ」
「噛んでるって。
綾登こそよく噛めよ」
ぷにぷにの頬を指で、ぷっと潰された。
「あーうお」
「可愛いよ」
助けを求める小さな手を握って、もう少しだけのその可愛い顔を堪能する。
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