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第1118話

「あ、おかえり」 『ただいまです。 掃除より読書の方が進んでますね』 三条が掃除に行くというので重い腰を上げて掃除をしようと思ったのだが、つい積ん読に手がのびてしまった。 だって、自分好みの未読本だ。 読んでしまうよな。 まぁな、と悪怯れた様子もなく頷いた。 今更、恋人に嘘を吐いてまで格好付ける必要はない。 『なに読んですんですか?』 表紙を見せると、面白そうですねと視線が帯をなぞった。 ふとした瞬間、大人びたなと思う事が増えた。 今もそうだ。 大人びた─色っぽくなったと思わされる。 「まだ頭ん部分だけど面白れぇよ。 買っといて良かった」 『俺も何冊か本買ったんです。 読み終わったら交換してくれませんか?』 「お、良いな。 じゃあ、積ん読から選ぶか? まだ、こんなにあんだよ」 ストレスを発散させるように書店に行っては買い貯めた本は、どれも三条の好きそうなもの。 好みが似ているので必然的にそうなるのだが、それ以外にも三条が好きそうだからという理由で新たな本を手に取る事もある。 お陰で面白い本に出会えるので様々だ。 『あ、その本読みましたよ。 えっと……ほら』 好きそうだとは思ったが、まさか同じ本を購入していたとは。 本当に好みがピタリと解るようになったという事か。 はにかむ恋人が何を考えているかも分かる。 大方、同じで嬉しいのだろう。 自分も同じ気持ちだ。 『ネタバレしないようにしないとですね』 「してくれても構わないぞ。 そのネタを探しながら読むのも楽しいだろ」 『上級者の楽しみ方ですよ』 掃除は後にしてもう少し恋人との時間にしよう。

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