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第1122話

「なに見ますか? 笑っちゃいけない、紅白…」 『家族と過ごさなくて良いのかよ』 「昨日もそれ聴きましたよ。 そんな歳じゃないです。 それに、両親は弟と寝室ですし、次男は友達とオンラインゲームしてますし。 今日は子供がオールしても許される日ですから」 長岡は家族との時間を大切にしてくれる。 だけど、長岡だって大切な家族だ。 そう交換したのに。 「それに俺は今年も正宗さんと過ごしたいです。 駄目、ですか…?」 『駄目なはずねぇだろ。 俺もだよ。 遥登と年明けをむかえてぇ』 もしかして自分の我が儘だろうかと心配になってしまう。 疲れていて眠いのかもとか、そもそも年明けに特別な感情を抱いていないのかもとか。 なんだかマイナスな方に考えてしまいそうになるのを、長岡は一撃してくれた。 今年も一緒に年越しが出来て嬉しい。 長岡といる事が出来て嬉しい。 その言葉を聴いて、へにゃっと頬を緩めた。 「今年も笑って年を越せます」 『俺もだ』 長岡といられるだけで充分だ。 大切な人が元気でいてくれる事がこんなにも安心するんだと、今年になり痛感した。 沢山、沢山痛感した。 悔しい事もあった。 歯を食い縛る事もあった。 それでも時間は過ぎていく。 そして、むかえた年末。 世界で1番大切な人と健康でむかえる事が出来て嬉しい。 『来年も沢山デートしような。 手ぇ繋いで。 それから、買い食いもして。 また遥登の好きな場所に案内して欲しい』 「はいっ。 俺も全部したいですっ」 『来年も楽しみだな』 長岡とむかえる来年が、また笑顔で過ごせますようにと願いを込めて。

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