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第1123話

賑やかな番組を選局し、長岡とリモートでむかえた新たな年。 まずは、挨拶をしなければ。 「あけましておめでとうございます」 『おめでとうございます。 今年もよろしくな』 「はいっ。 此方こそ、よろしくお願いします」 頭を下げてから画面に向き直ると同じ様に頭を下げた長岡の前髪がサラサラと動いた。 たったそれだけの事に胸が弾む。 「新年の正宗さんも格好良いです」 『なに言ってんだよ。 変わってねぇだろ』 それでも、恋人は格好良い。 『今年の抱負は?』 「えっと、まずは教育実習をのりきりたいです…」 『そりゃ、大事な抱負だ』 「それから、正宗さんと家族が健康で過ごせれば後は我が儘は言いません」 ウイルスはいまだに世界を蝕んだまま。 今年になり急に消滅するなんて事はないだろう。 だからと言って付き合うつもりもない。 したい事が沢山ある。 やらなきゃいけない事も沢山ある。 そのすべては健康でなければ出来ない。 自分も周りの人達も。 負けてなんていられないんだ。 『うん。 気を付けような』 「はい。 正宗さんの抱負はなんですか」 『俺か。 俺も健康に過ごしてぇな。 30になるし、若い気持ちでいたら身体がついていかなくて怪我とかすっかもだろ。 気を付けたい』 「30…」 『遥登から見たらおじさんだろ』 「そんな事ないですっ。 正宗さんは格好良いお兄さんです」 小さな頃は大人だと思っていたが、実際長岡が30の年になっても昔ほど大人とは思えない。 勿論、良い意味で。 学校でも、長岡は大人びらず生徒とも対等にいてくれた。 だからだろうか、“大人”と形容するよりも“お兄さん”の方がしっくりくる。 『そればっかだな』 綺麗に整えられた眉を下げて笑う恋人はやっぱり格好良いお兄さんだ。

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