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第1124話
朝4時になっても、流行りの歌を流し続ける番組は終わらない。
この番組が終わるまでなんて理由を付けて起きているが、本当は会いたい想いをそうやって押さえ付けているだけだ。
「寝なくて大丈夫か」
『平気です。
それより、正宗さんと居たいです』
グッとくる台詞をさらりと吐いた恋人。
どんどん人を誑しこむような事を平気で言うようになった。
教育実習で生徒を誑すんじゃと心配になってくる。
人の良さそうな笑顔もそうだが、教育実習生と言うだけで生徒達は話し掛けてくる。
まして、母校の先生方は亀田や相川を筆頭に優しい方が多い。
『あ…、眠かったら寝てくださいね。
いつもなら寝てる時間ですし』
「平気だよ。
おじさん扱いか」
わざとからかう様に言えば三条は首を振る。
同時に揺れる癖のない髪が蛍光灯に透かされていつもより淡い色をさせる。
たったそれだけの事なのに目を離せない。
本当に成長期ってのはこわいな。
『正宗さんは、おじさんじゃありません。
格好良いお兄さんです』
そして、またこれだ。
心からの言葉をくれる。
だから、こんなにきちんとした気持ちで受け取れる。
真っ直ぐな三条の生き様のようだ。
だから、同じものを渡したいと思う。
この気持ちは一人占めするにはしあわせ過ぎるから。
恋人と分け合えば何倍にも膨れるこの想いを。
「あ、言い忘れてた」
『?』
「今年も愛してるからな」
三条はクリクリした目を一瞬大きくして、瞬きの間にはにかんだ。
『俺も…愛してます、』
「照れんなよ。
そういうところが、たまんねぇよな」
きっと今年も沢山この顔が見られる。
それが嬉しい。
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