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第1130話

自宅へと帰ってきて早々、次男は台所でおやつを作りはじめた。 あんこを水で伸ばし、買ってきた月見だいふくに栗きんとんの甘露煮をのせたら簡単に、だけど豪華なぜんざいの出来上り。 悴んだ手をあたためるようにパーカーのポケットに入れていたが、美味そうなおやつには勝てず、すぐに手に取った。 「和洋の合わさったお菓子ってなんでこんな美味いんだろうな」 「兄ちゃん、あんこの入ったパイとか好きだよな。 まだバターあるし、それも作る」 「楽しみだな!」 兄達の会話を聞いていたのか綾登はととっと駆けると、ベビーガードを掴みカチャンっと揺らした。 お菓子、美味しいに敏感な年頃だ。 「はあーう」 「どうした?」 「それ」 「食べる? ちょっと待ってな」 寝起きでも食欲全開の三男は大人しく待つが、背伸びをして早く食べたい気持ちが押さえきれていない。 三条はガードの向こうに行き、同じ目線になる。 やわらかな餅でも詰まれば大変だ。 大福部分の中からバニラアイスを掬うと数粒のあんこと共に小さな口へと運ぶ。 「いたあきます。 っ!!」 「美味しい?」 「いっちゃっ、すき!!」 「ははっ、1番好きか」 甘くて、ぜんざいがあたたかくてアイスが冷たくて美味しい。 この美味さは大人も子供も魅了する。 頬を両手で押さえながら美味しいねと顔をキラキラさせていた。 それを見た次男は、にやーっと楽しそうに声をかけてくる。 「兄ちゃんとどっちが好き?」 「はうと、こえ……んと……あのね」 あのね…と兄とぜんざいを交互に見て、もじもじと悩みはじめた。 流石にぜんざいに負けても凹みはしないが三男は本気で悩んでいそうだ。 眉が下り困ったを通り越して泣きそうにも見える。 満点の可愛さだが、少し酷な質問だ。 「どっちもだよな」 「んっ!」 力強く頷き抱き付いてくる。 ぜんざいを溢さないように綾登の頭をぐりぐりと撫でた。

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