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第1132話
寒の入り。
寒さが最も厳しくなる暦。
そんなの入らなくたって今年は寒さが厳しい。
朝から雪を掻き、学校に出勤してまた雪を掻き、帰宅して雪を掻く。
何度掻いても雪は降り積もる。
学校に関しては自分から手伝いをかっているのだが、駐車場の雪を掻かなければ自動車を停められない。
それに、翌朝の負担がでかくなる。
1回位、1日位…が後々時分を苦しめる。
階下に住む自分を気にかけてくれている夫婦が除雪をしてくれるのだが、土日祝日はその分自分が掻いていた。
降り始めは腰が痛んだが今では身体が冬を思い出し慣れたものだ。
「長岡さん、おはようございます」
「あ、おはようございます。
早いですね」
「やだ。
長岡さんの方が早いじゃない」
完全防寒をした婦人はマスクをしていても分かる楽しそうな顔で、ふふと笑う。
今年は息子に会えないと寂しそうに言っていた婦人。
この人達も我慢を笑顔で隠している。
真面目に頑張っている人が正しく評価されて欲しい。
真面目な人が馬鹿をみなくて良いように。
早く気兼ねなく会いたい人と会えるようになって欲しいものだ。
後からスコップとスノーダンプを引いたご主人がやってくると、また挨拶をした。
「長岡さん、早いですね」
「おはようございます。
奥様と同じ事を言うんですね」
「夫婦が仲良くする秘訣は、奥さんの尻に大人しく敷かれる事ですよ」
「ちょっと!」
この2人は夫婦だから一緒に居られる。
そんな事に、心の奥の何処かに隙間風が吹いている様に感じた。
それを振り払うように笑顔を称える。
「いつも、除雪していただいてありがとうございます。
お陰で楽に出られます」
「早く目が覚めるからついでですよ。
それに、いつも親切に声をかけてれますから」
たったそれだけの事で毎朝大変な事をしてくれるなんて、やはり優しい方達だ。
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