1133 / 1502
第1133話
「ただいま」
『おかえりなさい。
早かったですね』
「あぁ、下の階のご夫婦が手伝ってくれたんだよ。
ほら、あの果物くれる」
『あぁ。
お元気そうで良かったです』
本心からそう言っていると分かる顔でふにゃっ頬を和らげた。
他人の事を自分の事のように喜べる素直な心。
三条の長所だ。
それは清らかで、心配にもなる。
そんなに他人を気遣っていては疲れるだろう。
消耗してしまうだろう。
会えない今だからこそ心配だ。
自分の様に壁を作れとは言わないが、もう少し自分自身にも気を遣って欲しい。
「俺は、遥登とご家族が健康なのが1番安心するからな。
忘れんな」
『ありがとうございます』
「それにしても、眠そうだな」
『あ……、なんだか寝付きが悪くて。
でも、休みですから昼寝も出来ますし…』
「心配だな。
悩み事…ばっかだもんな」
三条はそれに迷いながらも頷いた。
こんな時じゃ眠れない日があってもおかしくはない。
ただ、心配は残る。
三条は、あまりに自分の感情を口にしない。
分かりやすいとはいえ心の中までは分からないことだってある。
やっぱり心配だ。
「遥登、なんにもなくても話してくれよ」
画面の向こうの恋人は、じっと画面を見てから僅かに視線を下へとやり、視線を戻す事なく小さく頷いた。
駄目だ
完璧、遠慮してんな…
服の上から指輪に触れ、必死に自分の中のナニかを抑えようとしている。
クリスマスを最後に会えていないのが悩みの種だ。
ともだちにシェアしよう!

