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第1136話

『20代30代の若者が…』 お昼のバラエティー番組を観ながらうとうとしていた三条が目を覚ますと、そんな言葉が聞こえてきた。 あぁ、またか…と思うのとほぼ同時にチャンネルが切り替わった。 そのまま様々な番組にジャンピングしていく。 「替えてくれたの? 良い子ね」 「へへっ、ぇ」 「じゃあ、パンパンマン観よっか。 遥登が寝てるから静かにしてようね」 「あーい」 「じゃあ、リモコン貸して。 あー、食べちゃ駄目」 ソファと炬燵の間で寝転がる三条からはリモコンを楽しそうに振る小さな頭が見えた。 毒を中和してくれる家族の気持ちがただただ嬉しい。 録画していたパンパンマンが流れ始めると何度も聞いた声が名前を名乗る。 「ぱっん…ぱんまんっ!」 「うん。 パンパンマンのポーズ格好良い」 「へへぇ、へへっぇ」 正義のヒーローは強くて優しくて、脆い。 だから、子供達の真っ直ぐな心で応援して支えないといけない。 父親が小さい頃に教えてくれた。 どんな無敵の英雄だって孤独は寂しい。 当たり前の事だろ、と。 そうだ。 いくら強くても孤高の存在でも、独りは寂しい。 それに寄り添えるのは、また強い心だ。 「ぱっ、ぱんまん」 「美味しそうだね」 「ね」 楽しそうな背中を見、またそっと目を閉じる。 優しい空気しかない自宅はとても心地が良い。

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