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第1139話
兄が腕を擦っている。
まただ。
ここのところ、痒そうにいているのを知っている。
耳障りなアナウンスが響く頃の話だ。
トンッとわざと音をたてて痒み止めを炬燵の天板に置いた。
「ありがとう」
「ん。
そうだ、なんかお菓子作ろうと思うんだけどなんか食いたいのない?」
「んー、手軽に食えるのが良いな。
スティック型のケーキとか、
で、一緒にゲームしよう」
「うんっ!
やる!」
兄の笑顔の裏には色んな感情がある。
当たり前の話だ。
そんなの分かってる。
分かってるけど、でも、大切なたった1人の兄だ。
心配になって当然だろ。
俺の兄だ。
俺と綾登だけの大切な。
「チーズケーキも良いけど、チョコ味も良いよな」
「あー、最高」
だから…。
だからな。
どうか、兄が甘えられる人が気付いてくれますように。
どうか兄を助けてください。
一瞬、あの良いにおいが頭に浮かんだ。
なんでだろうな。
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