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第1140話
1月11日。
三条の参加する成人式は雪解けを待ってだが、成人の日のお祝いに食卓には所狭しと食事が並ぶ。
ちらし寿司に、可愛らしい麩と菜の花をあしらった澄し汁。
からあげ、和え物、サラダ、筑前煮。
色も見た目も綺麗だ。
香の物も大根、白菜、蕪、きゅうりと種類がある。
本当にどこを見てもご馳走。
ちらし寿司を手巻き出来るように海苔まで用意されている机を見て、三条だけでなく次男も三男もご機嫌だ。
「おいち、ねぇ」
「美味そうだな」
「遥登が20歳になったからお祝いなんだよ」
「うれち?」
「うん。
嬉しい日」
三男は黒目がちの目を父親から兄へと移し、にこっと笑った。
「おめめ!」
「ははっ、ありがとう。
俺は成人した事より、ご馳走が食べられる方が嬉しいな」
にこにこ笑う兄の嬉しい日なら自分も嬉しいとばかりの顔が愛おしい。
ぱちぱちと小さな手を合わせて祝ってくれる優しい弟に祝われるのも、とても嬉しい。
「兄ちゃん、おめでとう。
お陰でちらし寿司が食える」
「俺こそ、ありがとう。
この筑前煮、優登が作ってくれたんだろ」
花型の人参も、それを更に引き立てる絹さやも、その手間が嬉しい。
自分の為に時間を使ってくれた事が嬉しい。
「勿体ないから写真撮らせて。
綾登、写るのか?」
「んっ!」
お気に入りの格好良いポーズをして待っているいじらしい姿を写真に収めた。
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