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第1150話

事の経緯は理解した。 息子への一方的な言い分に友人が庇い言い返したところ、男の子から反撃され驚き泣き出した、というのが正しいらしい。 変わりに怒ってくれた一樹くんには感謝しかない。 息子達はどうも怒りの感情を表に出さな過ぎる。 「お話は分かりました。 それで、息子はなぜ此処に呼ばれたのでしょうか」 三者面談では穏やかに話していた母親の芯のある声に、顔を真っ青にした担任はすみません…と口篭っている。 済まないから、すみませんなんだ。 謝って済む話ではないし、したくない。 「来年、別のクラスにしていただければこの話は終わりで結構です。 そちらもお仕事の最中ですよね」 「はい…」 決して怒っている様には見えないが、その言葉から怒りが伝わってくる。 顔も声色もいつもと変わらないのに面白い。 優登はぼんやりと兄は母似だなと考えていた。 「三条さんに謝りなさい」 「ごめんなさい……」 自分の方を見る事すらなく、口から吐き出される謝罪。 それは、なんの謝罪だろうか。 優登は卓上から視線を上げた。 まっすぐに太田を見る。 「それは、なんの謝罪ですか。 自分が許して欲しくて言っているのなら、俺は許すつもりはありません。 自分が責任を逃れたいだけの謝罪も必要ありません。 やれと言われて口にしただけの、口だけの謝罪になんの意味があるんですか」 「三条くん…太田さんも謝ってるんだから…ね」 「謝れれば許さなくちゃいけないんですか。 結局、俺の気持ちは…どうでも良いのかよ……」 泣けば勝ちか。 許さない方が悪なのか。 学校という小さな世界も、真面目な奴が馬鹿をみるこの大きな世界と同じだ。 所詮、学校は世界の縮図だ。

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