1150 / 1502
第1150話
事の経緯は理解した。
息子への一方的な言い分に友人が庇い言い返したところ、男の子から反撃され驚き泣き出した、というのが正しいらしい。
変わりに怒ってくれた一樹くんには感謝しかない。
息子達はどうも怒りの感情を表に出さな過ぎる。
「お話は分かりました。
それで、息子はなぜ此処に呼ばれたのでしょうか」
三者面談では穏やかに話していた母親の芯のある声に、顔を真っ青にした担任はすみません…と口篭っている。
済まないから、すみませんなんだ。
謝って済む話ではないし、したくない。
「来年、別のクラスにしていただければこの話は終わりで結構です。
そちらもお仕事の最中ですよね」
「はい…」
決して怒っている様には見えないが、その言葉から怒りが伝わってくる。
顔も声色もいつもと変わらないのに面白い。
優登はぼんやりと兄は母似だなと考えていた。
「三条さんに謝りなさい」
「ごめんなさい……」
自分の方を見る事すらなく、口から吐き出される謝罪。
それは、なんの謝罪だろうか。
優登は卓上から視線を上げた。
まっすぐに太田を見る。
「それは、なんの謝罪ですか。
自分が許して欲しくて言っているのなら、俺は許すつもりはありません。
自分が責任を逃れたいだけの謝罪も必要ありません。
やれと言われて口にしただけの、口だけの謝罪になんの意味があるんですか」
「三条くん…太田さんも謝ってるんだから…ね」
「謝れれば許さなくちゃいけないんですか。
結局、俺の気持ちは…どうでも良いのかよ……」
泣けば勝ちか。
許さない方が悪なのか。
学校という小さな世界も、真面目な奴が馬鹿をみるこの大きな世界と同じだ。
所詮、学校は世界の縮図だ。
ともだちにシェアしよう!

