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第1152話
「ただいま」
「ゆーとっ。
みっちゃっ」
「…ただいま」
手を洗った次男は小さな頭をくちゃっと撫でるとリビングを出ていった。
「遥登、綾登の事ありがとう。
綾登もお留守番ありがとう」
「みっちゃ、たいたい?」
「痛くないよ。
大丈夫」
教師になりたい。
呆然とした夢は、目の前の現実をどう受け止めるべきか考えていた。
そんな時、頭に浮かぶのは元担任の姿だ。
子供の気持ちを忘れておらず、偉ぶらない。
一緒になって馬鹿をしてくれて、そして卒業した今でも大切に思ってくれている。
真っ直ぐに立つその背中を思い出す。
見謝ってはいけない。
忘れてはいけない。
優しくなりたい。
だから強くなくちゃいけないんだ。
許す事だけが強さではない。
強さは、泣かない事じゃない。
優しさは受け入れる事じゃない。
押し付けるものでもない。
「綾登。
俺、優登にお茶持っていくからちょっと待っててくれるか」
「これね、あげうの」
服を握り伝えてくる弟に頷いた。
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