1157 / 1502

第1157話

スマホを数度タップしメッセージを飛ばすと、少ししてから長岡が帰ってきた。 「ありがとうございました」 『いや、トイレ行ってついでに掃除してきただけだ。 礼を言われる様なことはしてねぇよ』 気負わない言葉に助けられてばかりだ。 それにしても、トイレ掃除の似合わない人だなと少しおかしくなってしまう。 大きな背丈を丸めて掃除をするんだろう。 ちょっとだけ興奮もしてしまう。 変な癖な自覚だけはある。 『大丈夫か』 「はい。 あとは、本人の気持ちの問題です。 理解するには理不尽な事ですから」 『そうか。 そうだよな。 本人が納得しないのに自分の気持ち押し付けるなんて失礼だよな』 長岡は、きちんと“相手”を理解している。 そういう教師ばかりなら弟は深く傷付く事はなかったのだろうか。 考えたって答えの出ない事を考えてしまう。 大切な弟だから。 笑っていて欲しい相手だから。 『遥登、遥登こそしんどくねぇか。 吐き出してすっきりするなら話聴くから言えよ』 「はい。 ありがとうございます。 でも、正宗さんも言ってくださいね」 『あぁ。 なんせ、俺の旦那だもんな』 「あ……は、い」 長岡は、こういうのも上手いから狡い。

ともだちにシェアしよう!