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第1158話

「少しだけ…良いですか」 『勿論』 「正宗さんが担任なら、こういう時はどうしますか」 『まずは、話を聞く。 中立な立場でな。 聞かなきゃ分かんねぇだろ』 長岡は、迷う事なく答えた。 『それから、食い違いがないか一緒に考える。 聞き間違いや受け取り方を間違えただけの時もあるからな。 それで解決すりゃ最高だ』 そんな姿が簡単に想像出来る。 『それでも解決しなきゃ、お互いがどうしたいかを聞いてなるべくそうしてやる。 揉め事が苦手な奴もいんだろ。 だけど、どっちかだけが我慢すんのはさせねぇ。 保護者を交えて話し合いの方が良さそうならそれも進めるけどな』 三条はただじっと聴いていた。 『学校ってのはな、世界の縮図って例えられるだろ。 校則は憲法だ。 皆の生活が円滑にいくようなのばかりじゃねぇのも似てんだろ。 じゃあ、教師はなにに当たるかって言ったら、警察の役割もしなくちゃならねぇし、消防も救急しなくちゃいけねぇ。 だけどな、それだけじゃない。 生徒が気持ち良く青春を楽しめる様に花を植えたり樹の剪定をしたり、ゴミも拾わなくちゃいけねぇな。 雪だって掻かねぇとな。 つんのめったら大変だ。 近所の人達みたいに見ているだけもする。 人がやりたがらない事もして、時には嫌われ役もこなすんだ』 なんて事のないように言ってのける長岡。 『相手が人間だからな』 三条は気が付いた。 『決して偉ぶっちゃいけねぇ。 大人だから偉いなんて勘違いだ。 あくまで、人間を相手にしてんだから尊敬のない関係なんてお互いやりづれぇだけだろ』 “生徒”の前に1人の“人間”。 そう考えれるのは、そこに尊敬があるからだ。 そうか。 長岡のクラスがあんなにも居心地が良かったのは、見えない所で花を植えたりゴミを拾って住みやすくしてくれていたからだ。 きちんと個として見ていてくれていた。 だからだ。 A組が今も1番のクラスだと胸を張って言えるのは。 夢を、この道を志したのは。 噛み砕けたそれは、切断面が鋭く、また新しく見えた面に問題もある。 それでも、それをまた噛み砕いて咀嚼して飲み込んで。 この人の様になりたいと願う。

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