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第1164話

午後の授業も終わり、1階に降りていくとテレビを観ていた三男がパッと嬉しそうな顔をして此方を見た。 「はーぅっ」 まるで付き合いたてのカップルの様だ。 だけど、それが可愛い。 ととっと小走りやってきた綾登は上手く止まれず兄の脚にぶつかった。 「…っ」 途端、局部に走った痛みに蹲る。 「うわ…」 「はうと?」 痛い。 痛いなんて言葉じゃ軽過ぎる程痛い。 「綾登、謝っとけ。 いつか分かるから」 「ごめんなちゃい」 「大丈夫…」 「いたいたい…」 「わざとじゃないもんな…。 でも、次からは気を付けてくれると、嬉しい」 踞り丸くなる長男とその頭を撫でる末っ子。 そして、兄の痛みが解り、わざとではないだけに弟も怒れず、なんとも言えない顔をした次男。 夕食の支度をしていた母親はやってしまった…とばかりの顔。 次第に痛みが和らいできたが、それでも内臓を強打した三条は床にぺたりと倒れ込んだ。 「はっ!」 「綾登、兄ちゃんがやばいぞ」 「ちゃ、ちゃい…」 「くく…ははっ、大丈夫だよ」 痛みに倒れたと思った綾登は三条の頭に覆い被さり撫でてくれた。 だが、もう少しだけ踞らせて欲しい。 余韻すらエゲつないんだ。

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