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第1169話

その日もいつもと変わらない1日だった。 朝から通話を繋げっぱなしで同じ時間を過ごす。 夜になりテレビ放送の映画を観てそのままニュース番組を観る姿を眺めていた。 その時だった。 三条の顔に陰りが見え、しんどそうに歪められる。 しまったと思うには遅すぎた。 偉そうな口調で話す年配者に気付けなかった。 『なんで……そんな事が、言えるんですかね。 長い人生のうちの1年だ、なんて言われたくありません。 俺にとってはこの1年もとても大切な1年です。 正宗さんと一緒に過ごしたかった大切な…。 そんな1年をそんな風に言われたくないです』 絞り出した声は、深く傷付いていると静かに物語っていた。 悲しみ傷付き、理不尽な言葉に現状に足をとられ転んで。 それでも笑っているから大丈夫だと勘違いを起こしてしまう。 三条は、とても真面目な子だ。 自粛しろと言われればそれを守り、不要不急の外出をするなと言われればまたそれも守り、自宅で大人しくしていた。 無責任な事は出来ない。 それに、そんな事で誰かを守れるならそれが良いと笑って言ってしまう子。 自分より誰かを優先出来る子だ。 だからこそ、深夜のデートに誘っていた。 少しでも発散しないと苦しいから。 それを隠すのが上手いから。 なのに、それまで我慢させてしまった。

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