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第1170話
『正宗さんに会えなくて寂しいより、正宗さんが感染しないか不安ばっかりでこわくて…。
でも、時間をみて会いに来てくれたり通話してくれて……。
だけど、正宗さんにもしもの事があったら、俺は、……俺…………』
優しい人ばかりが傷付くなんておかしい。
そうだろ。
そんなの不公平だ。
『すみません…。
なに、言ってるんですかね…。
俺は家族と一緒に住んでで恋人だって近くにいて恵まれてるんですよね。
こんな我が儘すみません…』
手の甲で乱暴に目元を拭った。
遥登が、泣いた。
たった1人で。
俺がいるのに。
「遥登、40分後出てきてくれ」
『え……』
「会いてぇ。
俺が会いたいんだ。
頼む…」
了承の返事も聴かず、コートと財布とスマホを持って電気もそのままに部屋を出た。
駄目だと言われても行く。
ここで会いにいかなかったら自分が許せない。
真っ白な雪が、すべてを隠してしまう前に行くからそこに居てくれ。
傍に、隣に、この腕の中に。
手を握らなくても愛は分かち合えるなんて糞食らえ。
手を握って安心する事だってある。
大切な恋人を、1人で泣かせずに済むなら、愛なんて分かち合えなくて良い。
独り善がりでもなんでも良い。
だから…
「頼む」
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