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第1171話

長岡は40分もせずに到着したが、神社へと続く足跡に早くなる足取りを緩める事は出来なかった。 「遥登…っ」 「あ…」 境内の下で膝を抱えていた三条は長岡の声に腰を上げた。 心配そうな顔をした長岡が、また名前を呼んだ。 「遥登」 「正宗さ、」 降り続ける白に消されていく足跡を踏み、此方へとふらふら近付けば腕を引っ張られる。 そして、ぎゅぅっと強く抱き締められ良いにおいに包まれた。 長岡だ。 においも、体温も、長岡のもの。 ずっと、ずっと恋しかったもの。 「遥登…っ。 待たせて悪かった」 「我が儘を、言ってしまって……すみませんでした……」 「俺が会いたくて来たんだ。 俺の我が儘に付き合ってくれてありがとな」 「……ありがとうございます…いつも、ありがと、ございます……正宗、さ…」 ボロボロと零れる涙が長岡のコートに染みていく。 マスクもマフラーも涙で濡れて、それでも涙は止まらない。 擦りすぎて目の縁が痛い。 それでも溢れる一方で、自分の意思なんて関係なかった。 「遥登」 「あい、たかった……」 やっと口から本音が出ていった。 我が儘な本音だ。 それなのにずっと抱き締めていてくれる。 背中を擦ってくれる大きな手が優しくてあたたかくて、みっともなく泣きじゃくった。

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