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第1172話

ボロボロと泣きながら懸命に言葉を紡ぐ姿は、さながら小さな子供のよう。 小さな小さな、出会うよりうんと前の幼い子供。 長岡は泣かなくて大丈夫だと背中を擦るしか出来ない。 なんで子供ばかりが我慢をさせられるんだろう。 この子達が何かいけない事をしたのだろうか。 悪い事をしているのだろうか。 そんな事ない。 絶対にだ。 冷えた身体をあたためるように強く抱き締める。 「よしよし。 良い子だな」 三条は頭を振って否定する。 そんな事ないと、頭を振れないように後頭部を少し強く撫でた。 良い子だ。 心配になるほど良い子だ。 「良い子だ。 俺が言ってんだから、そうなんだよ」 とんだジャイアニズム。 だが、この子の痛みも苦しみも全部自分のものにしたいんだ。 1人で持たなければいけない、なんて事はない。 自分の苦しみは自分のもの。 だけど遥登の苦しみも自分のものだ。 自分のものにしたい、そんなただの我が儘。 「遥登は良い子だ。 俺の自慢だよ」 自慢の彼氏だ。 自慢の旦那だ。 それは誰も否定出来ない。 三条本人でさえ。 大好きだ。 愛してる。 遥登。 と、何度も口にした。 少しでも不安が和らぐように。 そんな事しかしてやれないが、それだけでもしてやれる事がある。 不安定だった心音が長岡のそれと混ざりあっていく。 その心地良さに三条が落ち着きを取り戻すまでずっと抱き締めていた。

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