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第1173話

ちびちびと柚子レモンを飲む三条は漸く落ち着いてきた様だ。 ストレスやばそうだな 冷えたからか顔色もあんま良くねぇ とりあえず落ち着いたら車行くか あっためねぇと いつもより血色がない肌は青白く、今すぐにでも車に行った方が良いとは思ったのだが、離れたくないとばかりにコートを握られた。 身体を離されるのも嫌だとアピールしてくるのは本当に珍しく三条の心の消耗具合が分かるようだ。 先に落ち着かせた方が良いと思い暫く背中を擦っていたが、やはり冷える。 落ち着きを取り戻してきた頃、何か飲んで腹もあたためようと諭し今に至った。 境内の屋根が雪こそ遮ってくれるも風は冷たい。 少しでも風が当たらないよう壁になる。 「美味いな」 「はい」 「飲み終わったら車行こうな」 すっかり冷たくなった髪を撫でてると、じっと此方を見てから頷いた。 その姿が痛々しい。 なぜ、気付けなかったんだ。 もう2度と、こんな顔をさせたくはなかったのに。 悔いばかりが頭に浮かんで、目の前の雪のように積もっていく。 「でも、焦んなくて良いからな。 ゆっくり飲みな」 冷たい髪を撫でた。 耳も冷たい。 いつもの体温は真っ白な雪と冷たい空気に奪われ、とても冷たい。 「良い子だ」 だが、1番の懸念は心の方。 目に見えないからこそ不安になる。 「正宗さんも」 「俺?」 しっかりと上下する頭を胸へと抱き寄せた。 「お手本がこんなに格好良いからな」 あまり会話をせずとも気持ちは伝わっている。 だから、これで良い。

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