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第1174話

小指でなく、手をしっかりと繋いで車へとやって来た。 エンジンをかけて暖房を点けてから一緒に後部座席に乗り込む。 見られる事より三条の方が優先だ。 今は世間なんて知らねぇ。 そんなものは二の次だ。 「寒いだろ。 もっとこっち来いよ」 「はい」 甘えてくるのは嬉しいが、理由が理由なだけに心配も同居する。 「本当に寒くねぇか」 「大丈夫です」 とは言いつつも、すり…と身体をくっ付けてきた姿に胸が締め付けられる。 いつも頭をフル回転させ理性の強い三条の無意識だ。 こちらの方が本心に近いのを知っている。 投げ出された手をもう1度しっかりと握った。 「いつもの体温の半分もねぇぞ」 「流石にそれはありますよ」 本気で言った言葉がよほど面白かったのか、三条はふにゃっと表情を和らげた。 僅かでも良い。 凍る心が少しでも緩んでくれれば良い。 「よしよし。 蓬が好きなあやし方してやろうな」 眉間から頭を撫で、頬を揉みながら顎を掻く。 擽ったいのか、ふふっと軽い笑い声が漏れた。 「遥登も好きか」 「擽ったいです」 無理矢理笑わせるつもりはない。 ゆっくりと気持ちに寄り添ってで良い。 だが、ことのほか撫でられるのが気持ち良いらしくされるがままに顎の下を掻かれている。 これは可愛い。 「柏はここも好きだぞ」 そう言って、するりと指を耳のうしろへと持っていき優しくなぞった。 「う、あ……」 指の冷たさと敏感な箇所への接触になんとも艶っぽい声を漏らした。 弱っている三条に発情なんてとは思うが、ムラッとするものもある。 押し殺すけども。 「へへ……」 「更に一緒に頭も撫でると溶ける」 頬に血色が戻ってきた。 表情も。 ほんの少しだけ安堵する。 それにしても、可愛いな

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