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第1181話
腹の掃除を済ませすっきりした身体でベッドの上で三角座りをした。
さっきから色んな事を考えてしまう。
長岡を心配させてしまった事や、傷の事。
あんなバレ方をしてしまったのも。
それから本当にセックスをするのかどうか。
暖房のお陰で下着のみを纏っていても特別寒くはないが膝を抱えている三条の後で、同じく下着のみの長岡は救急箱とは名ばかりのケースから消毒液を取り出した。
「冷てぇぞ。
少しだけ我慢してくれ」
消毒液が振り掛けられ、冷たさに背中を丸めた。
「あの、心配をお掛けしてすみません…」
「謝る気持ちはよく分かる
俺が遥登の立場でも謝ると思うしな。
でもな、こういう時はありがとうって言われた方が嬉しい」
優しい。
優し過ぎる。
その優しさから与えられる痛みを覚えていたい。
もう2度と悲しませないように。
寂しい想いをして欲しくないから。
長岡に向き合うと、真っ直ぐに目を見た。
「ん?」
「心配してくれて、ありがとうございます」
長岡は優しく頬から耳をすりると撫で、後頭部をよしよしと撫でてくれる。
その手が気持ち良くて嬉しくて。
触れたかった長岡にそっと手を伸ばした。
「どういたしまして」
先程のサディスティックな目は、いつの間にかいつもの穏やかさを取り戻していた。
雰囲気を壊してしまった申し訳なさに唇を噛むもすぐにやめた。
「そうだ。
噛まねぇの。
良い子だな」
長岡が小首を傾げてきたから。
そうして、目を覗き込むようにして頭を撫でてくれた。
まるで幼い子供になったようだが、それに安心したのは事実だった。
人は具合が悪い時に子供っぽくなる事が多いが、それは身体だけではなく心の方にも当て嵌まるらしい。
長岡の存在に少し幼さが戻ったようだ。
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