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第1182話

「被っとけ」 頭にブランケットを被せられ、背後から抱き締められる。 何処もかしこも長岡のにおいでいっぱいだ。 長岡のにおいしかしない。 それに、背中に触れる体温が涙が出るほど嬉しい。 「ほっせぇな。 遥登ってすぐ解る」 噛み締めるような声は愛情を含み、傷付いた心を治していく。 素肌の触合いがとても心地良い。 「…ブランケット、正宗さんのにおいしかしません」 「俺しか使ってねぇからな。 興奮してくれる?」 頷けば楽しそうな空気が自分まで包む。 長岡が嬉しい時の空気だ。 頭も肌も覚えている。 「俺も遥登が部屋にいるだけで興奮する」 「いるだけで、ですか…?」 「ん。 格好悪いだろ」 「……すごく、嬉しいです」 首だけ後方へやれば、愛おしそうな目がすぐそこにあった。 容易く触れられる距離。 みんなの為に無茶苦茶なお願いを我慢してきいてくれている方が沢山いる中で、俺は恋人に触れられたいと、触れたいと思いました。 そして、その恋人がきっかけをくれました。 「正宗さん」 「うん。 俺だ」 俺は我が儘だから触れる事を選びます。 触れた素肌は、やっぱりひんやりしていました。

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