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第1214話

「すっきりしたか」 「あ、ありがとうございます…」 手渡された“自分の”マグにはいつもの甘いコーヒー。 清潔になった足で炊事場から戻ってきた長岡は、当たり前のように隣に腰をおろした。 「いだきます」 隣で長岡も同じ物を飲み始めたので、三条も少しずつ飲んでいく。 「インスタントで悪いな。 そんなに時間ねぇだろ」 「いえ。 美味しいです。 あの……、ありがとうございました」 「セックスしてくれてありがとうなら、わりとやべぇ発言だぞ」 「え、あ…っ、そういう意味じゃっ」 「違げぇの?」 「……そう、ですけど…」 楽しそうな顔でコーヒーに口を付ける長岡はトンッと肩をぶつけた。 こんなにくっついて座っているのも嬉しくて頬の筋肉が緩んでしまう。 なにが正しくて、なにが間違いだとか、そういう難しい事はよく分からない。 だけど、隣で恋人が笑っていてくれるとそれが自分にとって大切だと実感する。 なによりも守りたいものは恋人。 長岡が隣にいてくれる事がなにより嬉しい。 それを頑なに守ろうと思った。 長岡が大切だから。 だけど、結局は身体の傷を見て傷付けてしまった。 すり…と頭を擦り付けると、恋人の纏う空気がやわらかくなる。 「足、汚してしまってすみませんでした」 「あぁ、気にすんなよ。 ぶっかけろつったのは俺だしな。 それにしても、踏まれたいなんてドMはすげぇな」 「…………正宗さんにだけです」 「俺も、遥登になら踏まれても良いな」 「本当ですか?」 「ガチ」 顔を覗くと、愛猫達にするように顎の下を撫でられた。

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