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第1218話
「三條さん、宅配です」
「はーい。
綾登、ちょっと待っててね」
「ん!」
配達ドライバーの声に母親は末息子を部屋に残して玄関へと向かった。
長男は次男の迎えに行っていて、僅かな時間とは言え幼い子供を1人にさせてしまうのが少し心配だがこんな時なので連れていくのも憚られる。
結局感染リスクを遠ざけたい気持ちを優先させた。
「すみません。
此方、三條さんのお名前で違いないでしょうか」
孫達と会えなくなった祖父母からの荷物だ。
こうして気に掛けて貰えるのは有り難い。
子供達もたまにビデオ通話で顔を見せているようで、生存確認にも一役買っている。
それに、兄弟みんなよく食べるので食費的にもとても助かる。
「では、失礼します」
「ありがとうございました」
大きな箱を玄関の隅に置きそれを引っくり返す。
中身は蜜柑だ。
重みで潰れないようにしておいて、末っ子の元へと戻る。
腐っていないかの確認は後からだ。
だけど、その僅かな時間とは母親の体感でしかなかったのだろうか。
母親が少し目を離した隙に、リビングは大惨事になっていた。
「あー…」
「へへぇ」
溢れかえる白、白、白。
ティッシュだ。
なんで、子供はティッシュや傷絆創膏が好きなのだろうか。
長男も次男もした悪戯に今更凹んだりはしない。
「楽しかった?」
「へへっ、へへぇー」
「そっか。
でも、使う分しか出しちゃ駄目。
拾うの大変でしょ」
「あい」
だけど、お米や小麦粉、口に入れてはいけない物ではなくて本当に良かった。
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