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第1221話
「はう、おねがちます」
「任せろ」
力加減が分からず握り潰してしまう綾登から蜜柑を貰うと、皮を剥いていく。
幼い末っ子は小さいのに力が強い。
服を握られると跡がくっきり残る。
そういえば、次男もそうだったなと寝転ぶ次男を見下ろすと、あー、と大きな口を開けて蜜柑を食べていた。
「おいち?」
「ん。
美味い」
「あー」
「ほら」
「こっちも剥けたよ。
優しく持ってな」
「あっとます」
兄に挟まれ、にこーっと笑った。
反抗期の兄もいつも優しい兄も、つられて笑う。
「へへぇっ」
「すげぇ笑いながらおやつ食うの、何度見てもやべぇよな」
「可愛いだろ。
な、綾登」
「なぁ!」
機嫌の良い三男は1房食べると母親にも蜜柑を分けに行った。
ついでに、夕飯の支度を始めた母から蒲鉾の切れ端やチーズも貰いたいのだろう。
「みっちゃ、みあん!
あーちて」
「良いの?
ありがとう」
「おいちね」
「美味しいね。
でも、まだ野菜しか切ってないから食べられるのないよ」
やっぱりそれも理由の1つだったらしい。
ぷっと唇を尖らせながらすぐに帰ってきた。
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