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第1222話
『ただいま』
「おかえりなさい。
遅かったですね。
忙しいですか…?」
『んー、会議が終わらなかっただけだよ。
知らねぇって内容だったから進まなくてな』
長岡にしては遅く、時刻は20時を挿していた。
公務員とはいえ学校職員の勤務時間は9時から17時までとはいかない。
始業時間は9時前。
部活があればもっと早くから出勤し、退勤する。
しかも、免許の更新の為に時間外の勉強も強制だ。
ジャケットを着たまま端末の前に座り込んだ長岡はくしゃくしゃとセットした髪を乱した。
「あ…」
『あ?
どうした』
「あ、いえ…。
セットしてたの格好良かったから勿体ないなって」
『3年も見ただろ』
「たった3年じゃ見飽きませんよ」
ははっと笑う姿はもう恋人のものだ。
『たったかよ。
何年見んだ』
「正宗さんが定年するまではみたいです。
あと30年は見られますね」
首元で自分の体温に馴染んだチェーンが揺れた。
長岡がストレスを発散させてくれてから身体が軽くなった気がする。
勿論、心も。
真っ赤になった背中がシャワーを浴びる度に痛むのも嬉しい。
そのお陰が以前のようなふにゃふにゃした顔で笑える。
『30年か。
そん頃、遥登は50か。
想像出来ねぇから楽しみだ』
本当に偉大な恋人だ。
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