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第1223話
画面の向からガタガタと音がした。
長岡が風呂から出たらしい。
おおよそ飲み物でも用意しているのだろう。
生活音が聴こえ本から顔を上げて待っていると、長岡は少ししてからマグを持ってくカメラの前へと戻ってきた。
タオルを首にかけたままの姿で現れた長岡はドサッとソファに深く腰掛け、脚まで上げる。
『待たせたな』
「いえ。
あったまりましたか?」
『ん。
あったけぇよ』
「髪は湿ってませんか」
『目敏…。
少しだけな。
でも、エアコンついてるし、腹減ったから先に飯』
そうだ。
帰宅時間が遅かったので食事の時間も押している。
1人なので焦る事はないが、空腹となればまた話は変わる。
たが、飯と言ったのに動こうとしない。
「コンビニご飯ですか?」
『ん?
あぁ。
今日はカップ麺食う。
お湯沸かしてるから、今は待ち。
どうせ待つなら遥登の顔見ててぇなって思ってこっち来た』
「っ!」
さらりと人を誑す言葉を吐く。
しかも、自分にだけ。
「……嬉しい、です」
『お、素直だな。
後で会うからか?
可愛がられたい?』
「…そういう訳じゃ」
『かわい』
長岡が炊事場を振り返り、ちょっと待っててなと画面から消えていった。
なんだか今日はやけにドキドキする。
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