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第1225話

1番は箱を開けた瞬間の顔だ。 パッと顔色が変わり、口角が上がる。 その顔が見られるだけでプレゼントを贈った意味がある。 「お! 手袋。 丁度欲しかったんだよ。 あ、でも、これして雪掻きすんの勿体ねぇな」 「本当ですか。 良かったです。 使ってください。 見せびらかして貰えると俺が嬉しいです」 「ん、大切に使うな。 ありがとう」 私服でもスーツでも、どちらでも合うように無難な物になってしまったが、シンプルさが長岡の良さを引き立ててくれる。 通勤は自動車なので寒さはなんとかなるが、そこから出れば雪景色。 寒波だ、ラニーニャ現象だと吹雪き、この地では電車が停まるのも珍しくはない。 只でさえ長岡は体温が低く手も冷たいのに、ここの土地は冷える。 それに、在校中、学校で雪掻きをしていた長岡は素手だった。 赤くした手で雪を割り投げる先生は、部屋へと帰ってくれば今度は駐車スペースの雪掻きをする。 日が沈み更に冷え込む時間にだ。 増して、今は何処へ行ってもアルコール消毒ばかりで手はカサカサ。 ハンドクリームを塗っても追い付けない程。 チョークにアルコールにと折角の綺麗な手が荒れてしまい勿体ない。 少しでも手の保護が出来れば嬉しい。 長岡は嬉々とした顔で手袋を取り出すと手に嵌めてみせた。 大きな手なのでキツくないか小さくないか不安だったのを解消する為と、きっと1番に見せてくれたかったから。 「あったけぇ。 似合うか?」 「とっても」 「スーツにも合うな。 今から使お」 子供みたいな顔で、そう言ってくれる長岡が愛おしい。 それに…… 「正宗さん」 「あぁ、そうか」 手だって繋げる。 しっかりと握り締め見上げれば優しい笑みがふってきた。

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