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第1227話

まだ長岡とは歩いた事のない道を選びながら駐車場へとデートをしていると、長岡が活字を見付けた。 流石、中毒者は小さな文字にも目敏い。 「へー、天麩羅屋。 天むすテイクアウトしてんのか」 「そうなんですか? ほんとだ…買えるんですね。 知らなかった」 「天むすって買って食った事ねぇな。 遥登と花見の時とか、そんくらいか?」 「正宗さんのはじめて奪っちゃったんですね」 「なんかその言い方えろいな。 遥登、もっかい言ってくれ」 「え、……もう駄目です」 「それもえろい」 「えろいって言い過ぎですっ。 誰か居たら変に思われますよ」 高校生のような会話を繰り広げながら歩く夜道は、三条にも長岡にともっても大切な時間。 なにが必要かなんて誰かに決められるものではない。 不要不急、そんな言葉に惑わされていたみたいだ。 肩をぶつけながら歩く距離に長岡は満足そう。 「えっちなのは遥登だろ。 この前のあの腰遣いはどこで覚えてんだ。 あとあのフェラ」 「こえっ、大きいですからっ」 「近付いてるからだろ。 声は小せぇよ」 「それは…でも、……だって」 楽しそうな顔には、怒るに怒れない。 「遥登のその顔は俺だけが知ってれば良いんだよ。 俺の特権だろ」 それに、これは俺の事を考えて言ってくれている。 「……正宗さんだけです」 「たまんねぇよな」 前よりずっと楽に息が出来る。

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