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第1228話

漸く着いた駐車場は消雪パイプの水が上手く排水出来ずびしゃびしゃだ。 なるべく水溜まりを踏まないように車へと近付く。 車内を少しでも汚さないように靴に付く雪や水を払ってから乗り込んだ。 「今暖房つけるな」 「ありがとうございます」 指輪を落とさないように注意しながら手袋を外し、ありがとうと伝えながら手渡した。 こちらこそありがとうと言われはにかむ。 プレゼントを贈った筈なのに、とても良いものを貰った気分だ。 長岡は自身の手に嵌まっている手袋を外し、手渡されたそれと共に助手席にプレゼントを丁寧に置いた。 「そういや、遥登って下の弟と一緒に風呂入ったりしねぇのか?」 「父が弟と一緒に入るので俺とは入りませんね。 赤ちゃんの時は入れたりもしましたけど、最近の話ですよね?」 「あぁ。 じゃあ、別にキスマーク付いてても大丈夫なのか」 「…あ、……そういう意味だったんですね。 …大丈夫です」 三男が産まれる前からキスマークや歯型に塗れていたので特別気にした事はなかったが、言われてみればパイパンである事以上に気にすべき事だった。 赤いのは湯温で誤魔化せても歯型は生々しい。 あんな幼い弟にみせられる筈がない。 「弟達にとって大切な兄なのは重々承知してるけど、俺にとっても大切な恋人だろ。 キスマークつけてぇし。 でも、教育的にはまずいだろ。 2歳くらいじゃ流石に…。 親御さんに言うかもだし。 あとキスマークはともかく、噛み痕はなぁ」 だからと言って付けないという選択肢は長岡にはない。 そして、その選択肢は欲しくないと三条も思う。 「つか、パイパンか」 「…っ」 「あー、そっちもやべぇな」 慣れというのはすごい。 当たり前になっていて、あまり気にした事がなかった事に漸く気が付いた。

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