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第1229話

ニヤニヤと緩む口元をマスクが隠していても、楽しそうな顔をしているのが分かる。 暗がりだろうとそれは変わらない。 何年隣でその顔を見てきたことか。 見えなくたって分かるに決まっているだろ。 「遥登って俺の事を酷く言わねぇのな」 「……だって、今は俺が………自主的に……してる訳ですし」 「庇ってくれまですんのかよ。 愛されちゃってんな」 前から伸びてきた手が、くしゃっと髪を掻き混ぜた。 冷たくなった髪が顔に触れるがあたたかさが勝つのはなぜだろう。 まるで子供の頭を撫でるような動きに胸がいっぱいになる。 「……1番、愛してます」 控え目な告白は更に長岡を笑顔にする。 「俺も1番愛してます。 世界中のなによりも」 居心地良さそうに指にはまったソレがその証拠。 大きな手をとり自分の胸に押し付ける。 キスの代わりに素直な気持ちを伝える為。 決して口下手ではないが、羞恥心が言葉を遮る。 だから… 「ちゃんと伝わってるから安心しろって。 遥登分りやす過ぎんだよ」 「本当ですか…?」 「ほんと。 俺の事すげぇ愛してるって顔してる」 「バレちゃいます」 「バレても良いよ。 でも、この顔見せんのは惜しいな」 あぁ、もう胸がどうにかなりそうだ。

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