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第1234話

レポートをまとめていた三条はマグを煽ろうとしてその軽さに中身が空な事に気が付いた。 いつの間に全部飲んだのだろうか。 キリが良いところまで打ち終わり、気分転換のおやつを見繕うのを兼ねて階下へと向かった。 さむ… 早く部屋戻ろ 寒い廊下を足早にリビングへと続くドアを開けると、くりくりした目と目があった。 「あ、はう」 「あれ。 昼寝は?」 「おきた。 みっちゃがねてうの」 「ほんとだ。 ブランケットは綾登がかけたのか?」 「こんこんしたら、たいへんね」 風邪をひいたら大変だ。 加えて、こんな時なので検査をし結果が出るまで仕事も学校も休まなくてはいけなくなる。 まして、幼い弟が鼻をグリグリされるのを大人しく受けるとは思えない。 嫌な思いは極力避けたいのが両親の思いなのは重々理解出来る。 良い子だなぁと頭を撫でると抱っこを強請った。 両手を拡げてぴょんっと跳ねる身体を抱き上げる。 「じゃあ、俺の部屋来る? 飲み物とおやつ持ってって休憩に付き合ってくれると嬉しいなぁ」 「んっ!」 「しー」 口の前に人差し指をたてると弟も真似をした。 「どっちが静かに俺の部屋にいけるか競争しよ」 嬉しそうに頷く小さな頭をまた撫でた。 適当な紙の裏側に弟と部屋でおやつを食べる旨を書きおやつの準備をそそくさと済ます。 「お湯使うからここで待っててな」 インスタントコーヒーとソフトクッキー、綾登のボーロをお盆に乗せ、冷蔵庫から子供用のパック飲料を片手に牛乳を取り出す。 「綾登の分だよ」 「あっとます」 自分が持つと小さなパックも、1歳児が持つと大きく見える。 いや、実際大きい。 小さな手でしっかりと握るそれは、綾登にとっては大きいんだ。 今にもパックを振りそうな頭を横目に、しょっぱいお菓子─小パックの米菓も見繕った。 「よし、じゃあ行こっか。 静かに行くの、スタート」 ソロ、ソロ…と歩く後ろを同じく静かに着いていく。

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