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第1236話

コンコンコン ノックに返事をするとマフラーに埋もれた顔が隙間からひょっこりと覗いた。 「あ、此処にいた」 ドアを開けて顔を覗かせるのは学校に行っていた次男。 帰路で冷えた身体、末端は真っ赤になっている。 「ゆーとだ!」 「おかえり」 「ただいま。 ここでおやつ食ってんの?」 「母さん寝てたから連れてきた。 一緒におやつ食ってんだよな」 「なっ! いっしょ、ちよ」 可愛らしいお誘いに頷くと、一度ドアが閉められた。 鞄をおろし、コートを脱ぐ。 適当な服に着替え、手洗いとおやつの準備。 それくらいの時間が経った頃だろう。 すぐにトントントンッと階段を駆け上がる音がしてドアの前で止まった。 「きたよ」 「お邪魔します」 飲み物と同じくソフトクッキーを袋ごと持ってきた次男は部屋に来た時にいつも座る所へと腰を下ろした。 溶けかけた氷がマグに見える。 次のクッキーに手を伸ばしたところで隣から幼い声が聞こえてきた。 「ちゅえたいっ」 「あったけぇ」 横を見るとあたたかな体温で指先をあたためようと、先程自分がしたように頬を揉んでいた。 すごく気持ちが分かる。 あったかくてやわらかくて気持ちが良い三男の頬は魅力的だ。 「ちゅめ、きゃぁぁ」 しまいには脇を擽られ転がる。 三条は飲み物を溢さないように机をそっと離し見守るだけ。 仲の良い弟達を嬉しそうに見ていた。

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