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第1239話
「減ってきたな。
遥登達のお陰だよ」
「みんなのお陰ですよ」
「だって、若者が感染拡げてるって散々言ってたろ。
だったら、減ったのも若者が頑張ったお陰だ。
俺は大切な時間を我慢してくれてる遥登や弟達に感謝してる。
ありがとな」
あれから数日後にピークを迎えた感染者数はどんどん下がっていき今日の夕方のニュースではゼロになっていた。
重症な方で出ずほっと胸を撫で下ろしたのは三条だけではない。
大人からの感謝の言葉。
非難の声はあっても、そういう声はテレビではなかなか取り上げてはくれない。
素直に受け取った。
「雪もやまねぇし、飲み物買って車行こうぜ。
耳赤くなってきてる」
「はい」
いつものデートがはじまる。
小指を繋いで駐車場までのデートだ。
2月になってより寒くなった気がするが、マスクのお陰で赤くなった鼻を隠せる。
それだけは有り難い。
耳はどうしようもないが鼻よりはマシだ。
すぐに末端が赤くなってしまうのも少し気にしてる。
日焼けしても真っ赤になって、冬は寒くて真っ赤になって、気にする事ばかり。
そいえば、正宗さんってあんまり赤くならないよな
血管まで強いのか…?
強そうだけど
じっと見詰めながら歩いていると腕を捕まれた。
「そこ、ぬかるんでんぞ」
指差された所をみれば排水しきれない水が雪と混ざってぐちゃりとぬかるんでいた。
危うく足をとられるところだった。
冷たい水とシャーベット状の雪が靴を濡らし足が汚れずに済んだ。
「あ、すみません。
ありがとうございます」
「見過ぎ。
車まで我慢出来ねぇのかよ」
そういう意味じゃ…っ、と慌ててももう遅い。
長岡は楽しそうにからかってくる。
そして、身を屈め耳共で囁いた。
「車行ったら、な」
なんだか艶やかな声だったが、車に戻ったらどうなるんだろうか。
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