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第1273話

欲しい物は全て与えたいと思うのは当然だ。 甘やかすのは恋人の特権。 自分の楽しみだ。 他の誰にも譲ってやらない。 にっと弧を描く唇が言葉を発する。 「なぁ、遥登。 金曜の夜セックスしようか」 くりくりした目がまっすぐにカメラを捉えた。 「セックス」 その目に好色の色が濃く滲む。 「会うだろ。 そん時に、1時間少しになるだろうけど」 答えなんて聴いているようで聴いてはいない。 だって、顔がすでに答えている。 「したい?」 三条はそわそわと視線を泳がせ、やがて頷いた。 そうだよな。 そう思って当然だ。 あれだけ毎週のようにセックスをしていたのに、感染症でいきなりそれも出来なくなり、20歳の性欲を持て余しているだろう。 実家は常に末弟と母親がいる。 部屋は年頃の弟の向かい。 満足に自慰も出来やしない。 「なら、それまで毎日少しだけオナニーして身体を燻らせたらどんなに気持ち良いだろうな」 楽しい。 甘いご褒美を見せ付けてから、待てを強いる。 欲しくてたまらない筈の恋人はご褒美の甘さには勝てず自ら待てを選ぶ他なくて。 そもそもマゾヒストな恋人だ。 自らそれを選んで喜びを感じているのかもしれない。 『ん……』 「楽しみだな」 小首を傾げると前髪が一房落ちてきた。

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