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第1288話
「ま、そろそろ良いか」
農業施設をぐるりと一周し終え駐車場へと帰るのか見上げるた三条の目に映ったのは、サディスティックな恋人だった。
そろそろ良いか。
それがなにを指すのか分からない。
血流の事だろうか。
それとも、帰宅時間の事だろうか。
いや、そんな可愛いものの話ではない。
だって、“そういう”かおをしている。
「少しだけ1人で歩けるか」
ギラギラした目が真っ直ぐに自分を見詰める。
1人で、歩く。
「少しだけ、ですか」
「そう。
先に車んとこに戻るから此処から帰ってこられるか」
それくらいなら出来る。
此処から駐車場までは真っ直ぐ一本道。
田んぼは遮るものがなく、人や車の通行もすぐに分かる。
不安がる要素はとても少ない。
小さく頷くと頭を撫でられた。
「じゃあ、先に行ってる。
連絡するからスマホ持っとけ」
「はい」
了承を確認するとスタスタと歩いていく後ろ姿を見送る。
長岡が駐車場へと到着すると、直ぐ様手元が光った。
すると、すぐにスマホに着信が届く。
「もし、もし」
『大丈夫か』
「はい」
『じゃあ、おいで』
絶対者の声に足を踏み出した。
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