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第1317話

「なーな!」 「おっきいバナナだな。 おやつはバナナが良いか?」 「あれ」 「みかん?」 「んー」 「迷っちゃうね」 寒くなってくると甘みがのって美味しい蕪や春菊、葉付きのにんじんの入った袋を持った兄の脚にくっ付いて離れない綾登。 それでも、もう片手はしっかりと母と繋いでいる。 「はうと、は」 「俺は綾登の食べたいのが良いな。 次は俺が食べたいの買うから、今日は綾登が選ぶ日にしようか」 沢山の果物や野菜に目移りしてしまうのは綾登だけではない。 バナナも蜜柑も林檎も、どれも美味しそうだ。 しかも、外気で冷えていて齧り付いたらさぞ美味いだろう。 目線を合わせて、何が食べたい?と聞くと、おずおずとバナナを指差した。 「バナナか。 美味しいもんな。 くださいって言ってみ」 しゃがみこむ兄のアウターをきゅっと握ってきた。 2歳になってからはあまり人に会わずに過ごしていたせいか、若干人見知りだ。 「なーな、くあさい」 「はい、ありがとうございます。 今日のおやつかな。 美味しいからほっぺが落ちちゃうかも」 頬が落ちない様にさっと手を当てた綾登に露店主が笑った。 「可愛いほっぺが落ちちゃうから、お家に帰ったらしっかりお手々洗ってね。 あとうがいも。 これ、おまけ。 どうぞ」 そう言い、綺麗な橙色の蜜柑を握らせてくれた。 小さな手には大きな冬蜜柑。 「あーと、ます」 「どういたしまして」 両手で受取った、それを母と兄に見せ嬉しそうに笑う。 無邪気で素直で可愛い姿に周りが笑った。

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