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第1319話
すっかり集中力の切れた三条は、腹の虫に催促されながら階下へと降りた。
廊下は冷たく、端っこに置かれた段ボールの中から蜜柑をいくつかパーカーのポケットに入れつつリビングへと顔を出すと、末っ子がとととっと駆けてきた。
そのまま脚にしがみつき、見上げる。
「はうと、おわった?
あそぶ?」
「今日は午後もあるんだよ。
夕方遊んでくれる?」
「ん。
いーよ」
ぎゅーっとしがみつき離れないのでそのまま振り払わないようにしながら歩く。
どうやら、今日は甘えた全開らしい。
ま、これはこれで可愛いので構わない。
「蜜柑食べる?」
「たべる」
「どうぞ」
ポケットから取り出すと、クリクリした目を大きくして喜んだ。
「んへへへ」
「今日の昼なんだった?」
「こんこんのうんどど」
「おー。
好き」
「あーともっ!」
きつねうどん美味いなぁと言いながら短い距離をゆっくりと歩いた。
炬燵に連れていくと交換に母親が立ち上がった。
うどんを温めてくるから綾登と待ってて、と。
自分でやると言ったのだが、綾登がべったりとくっつ付きそれを阻止する。
「あのね、こえ、みっちゃ。
こえ!
はう、ね」
楽しそうに描いた絵を力説する弟に、炬燵に座った。
この歳にもなって簡単な昼飯すら親に甘えるなんて。
だけど、全く気にしない顔で母親が戻ってきた。
「遥登、どうぞ」
「ありがとう。
いただきます」
盆の上にはとろろ昆布とパンパンマン蒲鉾ののったきつねうどん。
それと小さなお握りが2つとあたたかいお茶。
きっとリビングへとやって来たらすぐに食べられるように用意してくれていたであろうそれを前に、手を合わせた。
「いただきます」
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