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第1323話

調べ物もキリの良いところまで終わり、時刻を確認すると1時間と40分ほど。 起こすならタイミングが良いだろう。 ペンを端に置きながら、声をかけた。 「正宗さん、起きてください」 反応はない。 「正宗さん」 マイクを近付けてもう1度呼ぶが、やっぱり寝たままだ。 向かいの部屋には次男がいるのであまり大きな声は出せない。 無料アプリから恋人の名前をタップし通話をかけた。 すぐに着信音とバイブ音が聞こえ、ブランケットの山が動く。 いくら起こしてくれと頼まれたとしても気持ち良さそうに寝ているのに起こしてしまうのは忍びない。 画面の中の長岡がモゾ…と動いた。 すぐにスマホを片手で器用に操作し、通話を繋げる。 『はい…』 寝起きの少し掠れた声だ。 正直、すごく良い。 …じゃ、なくてだ。 「おはようございます」 『はよ…。 爆睡してた』 下を向きつつセットされた髪をクシャクシャと乱しす姿が、なんだか色っぽい。 それから前髪を邪魔そうに払いながら顔を上げる。 こっちはえっちだ。 パラ…と乱れた髪の一房さえも。 寝起きの無防備さ加わり、なんとも言えない色気が漏れている。 そのまま此方をじっと見詰め、目尻を和らげた。 『起こしてくれて、ありがとな。 シャワー行ってくる』 「大丈夫ですか?」 『ん?』 「いつもより、お疲れっぽくて…」 『疲れた顔してるか?』 「はい」 学校や自宅デートやらで、2年強ほぼ毎日会っていたから分かる。 頑張り過ぎた顔だ。 『じゃあ、今日は遥登に甘えようかな』 「はいっ」 例え物理的な距離があって出来る事が限られていても、そう言って貰える事が嬉しい。

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