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第1324話
シャワーの水音を聞きながら、手持無沙汰に本を捲る。
ソワソワとしてしまうのは、目の前に恋人の裸体があるからだ。
なぜ、こうなったかと言えば、話は10分前に巻き戻る。
『じゃ、行ってくる』
「あの…っ」
浴室へと向かう背中に声をかけたのは、三条からだった。
去っていく背中を見て、なんだか寂しくなった。
幼い子供でもないのにとは思うのだが、声をかけてしまい長岡は足を止める。
「……あ、やっぱりなんでもないです。
あったまってきてください」
『言ってみ』
「いえ、本当に…」
『寂しいなぁ』
慌ててなんでもないと言うが、そんなの長岡には通じない。
カメラの前しゃがみ込んだ長岡は軽く言う。
三条が気を使わないように。
長岡に甘やかされ、おずおずと口を開いた。
こんな我が儘、迷惑だろうなと思いつつも甘えることにする。
「……ご迷惑でなければ、…俺も、連れてって欲しいです…」
『俺の裸見てぇ?』
「……その、………はい」
『ははっ、正直だな。
んじゃ、遥登も行こうぜ』
画面揺れるぞと声をかけられ、すぐにカメラが浴室へと動いた。
脱衣場へ着けば、律儀に置くぞと声をかけられる。
適当な場所に置かれたカメラの前でシャツを脱ぎはじめ、男の身体にドキドキする。
ワイシャツの中に着ていたあたたかな肌着を脱ぎ肌色が多くなると、その腹筋な背筋、鼠径部に心拍数が上がっていく。
綺麗に割れた腹筋も、逞しい背中も、その裸体を知っているのは自分だけ。
勿体ないと思うほどくっきりしている。
あ、でも、誰にも見せないで欲しい…。
同じ男の身体なのに発情してしまう。
それが、ついさっきの話。
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