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第1333話

シャーベット状の雪を踏みながら長岡の愛車まで短いデートを楽しむ。 長岡と一緒ならなんでも楽しい。 大袈裟ではなくて、本当にそう思う。 長岡もそうなのか、時々手を揺らしたり此方を見たりしてくる。 その度に目があってふにゃふにゃになった。 なんでこんなにしあわせなんだろう。 世界がどんな風に変わってしまっても、長岡の隣は変わらずしあわせだ。 「遥登って、誕生日に作ってくれたケーキ以外にもお菓子って作れんのか?」 「え? 簡単なのなら作れますけど」 一体どうしたのだろうか。 数センチ下から顔を覗くと、少しソワ…っとした長岡は言葉を続けた。 「あー、食ってみてぇなって思って。 いや、気にしないでくれ」 三条は食い付いた。 ここで、この話を終わらせてしまうのは勿体ない。 「マフィンとかパウンドケーキで良いなら材料ありますよ。 というか、弟が作るのでわりとしっかり材料も道具も揃ってるんですけど」 長岡の興味が此方にくる。 これは、なんとなくではない。 目が違うから分かる。 「なんの味が良いですか」 「マジで…良いのか」 「はい。 どうせ暇ですし。 弟には負けるかもですが、俺だってそれなりに作れるんですよ」 長岡の目がキラッとした。 時々みせるこの目は、子供のように素直で可愛らしい。 ただし、中々見ることは出来ないのでかなりレアだ。 あ、でも、好きな作家の新刊を見せると見られる。 「じゃあ、味は遥登が好きなやつが良い。 遥登の好きなの知りてぇ」 「はいっ」 まるで腕を絡めたようにくっ付くとありがとうと声が降ってきた。 ありがとうは此方の台詞なのに。

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