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第1334話

ウイルスなんて関係なく、月日は過ぎていく。 冬休みが終わったと思えば春休みは目前。 そう。 気軽に会えなくなってから1年が経とうとしていた。 やっぱり、以前の生活が恋しい。 元に戻って欲しいと思う。 それでも、時間は巻き戻らない。 どんなに残酷な事があっても。 どんなに嬉しい事があっても。 そうでなくても。 時間の経過だけは皆に平等だ。 「ただいま」 「おかえり」 「あれ、珍しい。 兄ちゃんがお菓子作ってる」 参考書を買いに大きな街へと行っていた次男が、父親と帰ってきた。 父親も近くに用事があったらしく自動車で送ってくれたので、本数の少ない電車で行くよりも早く帰宅出来た。 もうそんな時間なのかとスマホの時刻を確認する兄に優登は近付く。 「たまにはな。 もうすぐ焼けるけど、味見するか?」 「良いの?」 「いつも美味いの作ってもらってるからな」 オーブンレンジが表示するカウントダウンはあと僅か。 手洗いうがい、着替えに飲み物の準備をすれば良い頃合いだ。 全くもって、タイミングが良い。 「やりぃ! あ、マフィンじゃん! 何味?」 「チョコと抹茶。 こっちはさっき焼けたやつでかぼちゃとプレーン。 のっけるの色々変えたから好きなの選びな」 プレーンはそのままは勿論、トッピングにチョコチップや紅茶のパックを破り混ぜたりもした。 かぼちゃにはその実をのせ、更にクリームチーズも混ぜ込み、チョコレート生地にもチョコチップやバナナ、その両方であったり、抹茶には甘納豆を混ぜ混んだり、少ない生地で楽しんで作った。 勉強ばかりしていたせいか、ストレス発散にもなっているようだ。 なんだか気分が良い気がする。 長岡の分を取り分けても充分な数はある。 弟とおやつに食べても大丈夫だ。 嬉しそうな顔をする次男はしっかりと手洗いうがいをし、コートを脱いでくると今来たばかりのリビングを出ていった。 戻って来る前に飲み物を準備をしようと各々のマグを取り出し、あと数秒を待ちわびる。

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