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第1339話

1つぺろりと食べあげた長岡は、目を見て美味かったと言ってくれた。 それだけで、作ってきて、渡せて良かったと思う。 「俺からも」 そう言い、助手席から紙バッグを手にすると、手に握らせてくれた。 「これ、バレンタインのチョコ。 受け取ってくれますか」 「はいっ。 勿論ですっ。 ありがとうございます…っ」 シックな色合いのリボンを巻かれれたプレゼントに頬が緩んでしまう。 大好きな人から、大好きの証を貰ったんだ。 嬉しくない奴がいるか。 開けても良いか聴けば、すぐに頷かれる。 ほどくのがもったいないがリボンを解き、破らない様に丁寧に包装紙を脱がせていく。 中に納められているのら、去年もプレゼントされた美味しいチョコレートだ。 「うわ。 これ、好きです!」 「知ってる。 なぁ、それ食う時、去年の食い方思い出してくれよ」 「……っ」 「あの食い方、好きだろ」 あの食い方。 あの、食い方だ。 わざと艶っぽい声で言ってきて、耳がアツくなる。 「ゆっくり食ってくれ」 こんなの勃つだろ… 「いー顔。 そそられるな」 「あ、煽らないでください…」 「煽ってねぇよ」 「煽られてます…」 「ははっ、かわい」 1つ口にするとチョコレートは口内の体温でとろりと蕩け、中から甘酸っぱい梅酒が溢れてきた。 フルーティーでだけどアルコールが大人の味で、ビターなチョコレートと良く合う。 嬉しそうな顔を見る長岡の穏やかな目にも気付かず、夢中でそれを味わった。

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