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第1340話

チョコレートを楽しむ三条につられ、長岡は取り出したもう1つを見下ろした。 マフィンは全部で6こ。 自分の好きな物を選んだのだが、選びきれず多くなってしまった。 だが、長岡にはその方が良かったらしい。 「マジで美味い。 もう1つ食っても良いか」 「え、はい」 あまり甘いお菓子を食べているイメージがない長岡が、バクバクと焼き菓子を食べている。 珍しい光景だと思う。 しかも、それが自分が作ったお菓子だなんて不思議だ。 2つ目を取り出すと、これも美味そうだと言ち包装をとく。 「甘過ぎたりしませんか?」 「ん。 丁度良い。 マジでいくつでも食える」 とはいえ、なにか喉を潤すものが必要だろう。 「飲み物買って……」 「ここに居ろ」 ドキッとした。 「ここに居てくれ」 「はい」 まるで独占欲。 気のせいだろうと思っても嬉しい。 長岡から与えられるものはなんだって嬉しい。 独占欲も、愛情も、あの日の行為も。 「でも、喉于詰まりませんか?」 「大丈夫だよ。 俺がここに居て欲しいんだ。 我が儘に付き合ってくれ。」 「我が儘なんて事はありません。 俺も、隣にいたいです」 折角の恋人らしい日。 今日は、自分も素直になる。 どうせ楽しむなら“2人で”が良い。 「あーん」 「え、あ…」 思わずパクッと口にすると、抹茶味が口に拡がった。 「すげぇ美味いだろ。 甘納豆入ってるとこ、すげぇ美味ぇ」 「じゃあ、俺も」 ボンボンチョコレートをクチモトヘ運び、しあわせを分け合う。 決して広くはない車内は絶えずしあわせそうな空気で満ちていた。

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